2020/10/11

たちぎれ線香(二人芝居)

どうも。

素晴らしき舞台。落語についても再認識。

今日はこれ。


落語で二人芝居「たちぎれ線香」。
川内清通さんの公演です。
去年、同じ手法で「井戸の茶碗」を見せてもらって、とてもよかったので、今回も期待して観にいきます。

会場は「プラザおおむら」。
ちょうどいい広さの会場なので、このくらいの会場が長崎市内にもいくつかあればいいのに。

コロナ対策の為、入場前に検温、手指の消毒。
座席は最前列は使用せず。一つ飛ばしなので、キャパの半分以下のお客さんの入りでした。

主要登場人物を演者二人で演じていくというスタイルです。
基本的に落語は2人の人物の会話で成り立っている(ことが多い)ので、お芝居にした時も、同時に会話する二人だけが舞台上にいれば成り立つ、という寸法ですね。
なお、落語としての「たちぎれ線香」は上方/江戸問わず、何度も聞いている話なので、あらすじは把握しています。

一応、あらすじ。
お茶屋遊びがすぎた若旦那。
店の番頭により、百日間、蔵の中で暮らすことを命じられる。
当然、茶屋に行くこともできない。
茶屋では若旦那が贔屓にしている小糸という芸者が若旦那の来訪を待ち焦がれ、手紙を何本も書くが返事がない。
手紙は番頭が止めているから若旦那には届かないのである。
百日経ち蔵から出た若旦那、小糸の手紙を読み、小糸のもとに急行するも、小糸は若旦那に会えなくなって衰弱し80日目の晩に亡くなったという。若旦那があつらえた三味線が出来上がった晩のことだったという。
若旦那が線香をあげると、その三味線がひとりでに鳴り出す。
若旦那は悲嘆に暮れ、生涯妻をめとることなく過ごすことを誓う。
ここで三味線の音が止まる。もっと弾いてくれと頼む若旦那。
「それはできません。ちょうど線香がたちきれました。」


で、これが二人芝居としてどうなるのか楽しみに見ます。

お話の導入部に「若旦那、蔵脱獄未遂」のシーンがありました。
落語ではこの演出を見たことがなかったので、オリジナルなのかなと思いました。
時系列が前後してしまうので、こういう演出は落語には挿入しにくい、という側面もあります。

「こんな雨の降る夜は、会いたい人に会えるって---」
(三味線の音)

当初、「このシーンは必要なのか?」といささか懐疑的な見方をしていました。
というのも、定吉が若旦那を蔵から「脱獄」する手助けをするのですが、そうであるなら、定吉と若旦那が会話をすることで、店に小糸からの手紙がたくさん届いているということを若旦那が把握し、定吉に手紙の一本でも託すのではないか、それが小糸に渡れば、何も悲しい結末を迎えずに済んだのではないか。と。
(そうだとしても、落語的には定吉のしくじりにより、小糸に手紙が渡るということはないのでしょうが)

しかし、最後まで見終わったときに「脱獄シーン」がジワリと効いてきたのを感じます(後述)。

序盤、親類一同による若旦那をどう処遇するかの「懲罰会議」を二人でどう表現するのか、ここだけ登場人物多いけど大丈夫かな?と思ってみていたら、見事にうまく演じられていて、舌を巻きました。

中盤、お茶屋から手紙が大量に届くシーンでは、たきさんの鍵盤ハーモニカが圧巻。

で、終盤。
蔵住まいを終え"娑婆"に出てきた若旦那。
小糸の死を知り悲嘆に暮れるシーン。生前の小糸についておかみさんの口から語られます。
若旦那があつらえた比翼の紋が入った三味線が出来上がったことを喜ぶ小糸。三味線を弾く小糸。三味線と一緒に寝る小糸。
ただでさえ涙を誘うシーンです。
が、ここでオープニングの「脱獄未遂」シーンが効いてきます。
あの、脱獄しようとした晩こそが、小糸がなくなった晩であり、あのとき聞こえた三味線は、小糸が現生で奏でた最後の三味線の音色だった。と。
もし仮にここで、若旦那が定吉に手紙を託し、無事に届けられたとしても、時すでに遅しだったことになるわけで。
そしてここで、あの時と同じ三味線の音色が聞こえてくる。
いやはや、参りました。感服です。

最後、落語でいうサゲの言葉で拍手をすべきかどうか戸惑ってしまいました。
暗転後明るくなった舞台にキャストが揃っておしまいでした。
静かな幕切れでした。
どんなにしんみりした落語でも「追い出し太鼓」で、「デテケデテケ!」と追い出されるのになれてるのでちょっと新鮮でした。

お芝居ならではの見事な作品だったと思います。
終始、川内さんと酒瀬川さんの演技に圧倒されました。
たきさんの三味線はいうまでもなく。

そして同時に、落語って素晴らしいよねと再認識できました。

ありがとうございました。見れてよかったです。

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