長崎で演劇とかの創作活動をしている団体「Kimamass」の代表、浅野さんと昨年知り合いになりました。
年末に「忘年会」と称してお酒を飲んだ時に、
「一時間文芸?一時間で作品を仕上げるワークショップ?面白いじゃないですか~、機会があったら参加しますよ~」と酔った勢いでぶちあげたところ、
「次回は年明け1月5日ですよ!予約入れときますね」
と、その場の勢いで、参加することになりました。
一時間文芸についての詳細は以下に公式サイトへのリンクを貼っておきます。
ぼくは落語しか作ったことがないのですが、基本的に筆が遅いのです。
遅いというか、書き始めるまでに異様に時間がかかってしまい、なんなら数日一文字も書けない、っていう状況に陥りがちです。
ただ、時々、"何か"が降りてきて、一気呵成に書き上げることができる、こともあります。
そんな時は極めてマレですけども。
というわけで、一時間で何らかの作品を作るって、ぼくにできるかなぁと甚だ不安になりながらも、きっと、何かの発見があるに違いない!と己を鼓舞して、会場へ向かいます。
一時間文芸は、参加者がそれぞれ2つずつの「キーワード」(名詞or形容詞)を提出し、そこからランダムで選ばれたキーワードが、その回のテーマになります。
さらに、各個人が提出した選ばれなかったキーワードのうちの一つを、作品の頭に持ってくる、というのが一つの縛りになります。
キーワードを選ばれた人は、選ばれなかった片方のワード、選べれなかった他の人たちは自分が提出した2つのワードの内の一つを選んでよい、ってことになりますね。
で、今回の全体テーマは「異界」でした。
ぼくが作品の頭に持ってくるワードは「炊飯器」になりました。
なお、ぼくのもう一つのワードは「角砂糖」にしていたのですが、昨日新調することになって、ちょびっと調べた「炊飯器」の方が話を広げやすいかなと思って、「炊飯器」をチョイスした次第です。
創る作品は、戯曲でも、小説でも、エッセイでも、詩でも短歌でもなんでもいい、とのことでしたが、なんだかんだで、落語しか書いたことがないので、自然と落語になりました。
1時間でできたところまででいい、とのことですが、どうにかして結末までたどり着かせたいという思いで、一生懸命に書きました。
内容はともかくとして、1時間フルに使って、ギリギリで出来上がったのが以下の作品です。
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テーマ:異界
個人ワード:炊飯器
タイトル:平行炊飯 -イッスイの夢-
「炊飯器!?」
「そう、炊飯器、ですよ。コメを炊く専用の機械ですよ」
「わざわざ?コメを炊くだけのための専用の機械があるだなんて、珍しい家ですね?」
「珍しくないですよ、普通、一家に一台、どこの家庭にもありますよ?」
「いやー、こっちにはそんなのないですよ~、へー、おもしろいなー。事前に調べてきた情報では、こっちの世界では、メートル法とか使ってるって話だったけど、『5.5合炊き』とかかいてあるー?へー知らない単位だー」
「ちょっと待ってください、大体、あなた誰なんですか?さっきから勝手に人の部屋に入ってきて、あれこれ物色して、警察呼びますよ、警察」
「ケーサツ?なんですか?ケーサツって?」
「だから、悪いことをすると捕まえに来る国家機関ですよ」
「へー、そんな団体がいるんですか。いやー、これまた驚いた、実に興味深い」
「とにかく質問に答えてください、あなたは誰なんですか?」
「『あなたは誰なんですか』って言われても…そういうあなたは自分が何者か端的に答えることができるんですか?」
「なんかめんどくさいこと言い出したよ、この人は。だから、ぼくはこのアパートのこの部屋に住んでる、鈴木誠ですよ」
「でしょ?ぼくも鈴木誠ですよ」
「ふざけないでください」
「ふざけてないですよ」
「ふざけてなかったらなんなんですか、同姓同名だからって不法侵入してきていいんですか?」
「んー、そりゃこっちの世界では、まだ実現していないから、にわかには信じられないのも無理はないけど、あっちの世界から『平行移動』してきた、鈴木誠。つまり、ぼくはあなたで、あなたはぼくだ」
「平行移動?」
「そう、今年になってから法律が変わって、大学の研究目的に限って、『平行世界』の自分自身に会いに行くことが可能になったってわけ。で、さっそくこうやってやってきた次第」
「ちょっと情報量が多すぎて理解が追い付かないんだけど、つまり、あなたはその『平行世界』のぼく自身ってこと?」
「まぁ、説明してもわかんないだろうから、詳しくは話さないでおくけど、とにかく、同時進行している別の世界の自分が自分に会いに来たってわけさ。もっと感動してくれてもいいじゃないか」
「そういわれてもにわかには信じられない…けど、冷静に見ると、姿かたちはぼくだな。顔も鏡で見る自分とおんなじだ」
「だろ?まぁ、信じてくれなくてもいい、こっちは異界の研究ができればそれでいいんだから。とにかく、時間がないんだよ、卒論の提出が迫ってるんだからさ」
「ああ、卒論はそっちにもあるのね?こっちは1年留年してるからまだ余裕だけど、そんなことなら、できることがあったら手伝うよ」
「そうだ、せっかくだから、この炊飯器とやら、使ってみてもいい?」
「それで卒論の足しになるなら」
「よしわかった、じゃあ、手出し口出しはしないでくれ、ぼくなりのやり方でやってみるから…えーと、これが、米?じゃあ、米を計って…あと、水?水はどこから?ああ水道ってこんな形なんだー!これで水を入れて、このボタンを押して…あとは待つだけってことかな」
「ふうん、そんなんで研究になるんだ。そっちでは、普段何を食べてるの?」
「食べる…というか、何かを食べてエネルギーを補給するというのは100年くらい前で終わって、今は、光に当たっていればそれでエネルギーはまかなえるよ。」
「植物だ。草食系男子ってのは聞いたことあるけど、植物系男子になっちゃったのか」
「食べなくてよくなったら、これと言って、争いも起きないからね、人間が争っていたのは、歴史の教科書でしか見たことがないよ、人間の欲求の一つがなくなっただけで、こうも平和になるんだな」
「なんだか、それはそれで、味気ない気もするなぁ」
「ところで、この炊飯器とやら、あとどのくらいで出来上がるの?」
「ん?まぁ、あと40分くらいってところかな?」
「40分!?ちょっとまって、40分って、こっちの世界で言うと、25マセット?ああ、だめだ、制限時間オーバーだ!もう戻らないと!ありがとう、とにかく、卒論のネタにはなったよ!じゃ、また…といっても、もう会えるかどうかわかんないけど、じゃーねー」
「おいおい、そこはトイレだって、玄関はこっちだって、あら、トイレに入ったと思ったら、いない…なんだったんだよ?
あれ?炊飯器の様子がおかしいぞ!?なんだ、米があふれて来てる!!あいつ!水の線のところまで米を入れたんだ!おいおい、何合分の米を入れたんだ、炊飯器が爆発するぞ!あー、どうするんだよこれ?
どうすんだよこれ…ん、んー、あー、寝てたのか。おれ。じゃあ、あれは夢?平行世界のおれがやってきたのは夢か。
あー、変な夢見たなぁ。くんくん、あー、そうか、米炊いてたんだった、ちょうど炊きあがったところか。
なるほど、一炊(一睡)の夢だったか。」
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…う、うん、一時間で書いたので、読み返してみると自分でもあれこれツッコミたくなるし、オチも大したことないし、書き直したいところもあるけれど、それもまた一興というところ。
とにかく、一時間経っても一文字も書けないってことにならず、なんとか最後までたどり着けたことはとてもよかったと自分で自分をほめてあげたい。
浅野さんからは「これは落語ならではの作品で、演劇でやろうとすると、姿形が同じ人間を2人用意する必要があるから、双子でも用意しないと上演ができなくなってしまう」とのコメントをもらって、その着眼点はなくて、新たな発見でした。
また、「マインドマップ」を使って考えるのも大変参考になりました。
今後活用していきたいと思います。
とにかく、一時間で何らかの作品を仕上げるというのは、かなり挑戦的だったけど、同時に刺激的でもあって、やっぱり、得るものは大きかったなと思いました。
他の参加された方々の作品も、同じテーマでこんなにアウトプットが違ってくるのかと、非常に興味深く味わうことができました。
また、参加したいなと思ってます~その際はよろしくお願いいたします。
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