原田宗典といえばやっぱり短編よ
「ただの一夜」
「夏を剥がす」
「夫の眼鏡」
「劇場の神様」
の4短編が収められてました。
「ただの一夜」
ぼくは原田氏の学生時代の回想録がとても好きです。
その回想録を膨らませたかのような「十九、二十歳」がかなり好きな作品なのですが、この「ただの一夜」もちょっと似たような雰囲気をまとっていてとても好きな作品でした。
「夏を剥がす」
原田宗典のホラー小説(?)ばかりを集めた「屑籠一杯の剃刀」という本があって、それを思い出しました。なんかちょっと怖い。宗教がらみなのかなんなのかがよくわからない、そのよくわからない怖さがある。
「夫の眼鏡」
長年連れ添った夫に先立たれた妻のやるせなさを描いた短編。
主人公が比較的年齢の高い女性って珍しいパターンじゃないですかね。
落語にも似た味わい。
ぼくは個人的にこの作品が一番好きです。
結局のところ、夫婦であっても、男女って分かり合えないもんなのよ。
「劇場の神様」
表題作。
大衆演劇の大部屋役者が主人公。
この主人公がいわゆる”手癖”が悪く、いけ好かない先輩役者に仕返しをしてやろうと、特技を活かして、先輩役者の大切にしているものを盗もうとするが…ってな内容。
曲がりなりにも舞台に上がったことのある身としては、本番前の浮足立った舞台裏の雰囲気だとかが、手に取るように実感できました。
舞台というのは、役者の技量はもちろんのこと、客席の熱量にも大きく左右されるというのが描かれていて、さすが演劇にかかわってた原田氏だけのことはあるなぁと思って読んでました。
盗みがテーマなのが、「平成トム・ソーヤ」にも通ずるところがあるなぁと感じました。
(「平成トム・ソーヤ」、あんまり肌に合わなくて途中で読むのやめちゃったけど)
面白かったけど、話の中で、登場人物の名前が役名と本名で出てきて、さらに登場人物がそれなりに多いので、ちょっと混乱してしまいました。
そんな感じ。
原田宗典の短編が好き。
無駄をそぎ落としていくスタイルは落語にも似てると思う。
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