今日はKimamasさん主催の「一時間文芸」に参加してきました。
前回は今年の1月に参加したので、約半年ぶり2回目になります。
今回の全体テーマは「うりぼう」。
個人として、お話の1行目に持ってくる単語は「スイッチ」でした。
そんなこんなで、1時間で出来上がった作品がこれ↓
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あいまいスイッチ
「ですから、これがそのスイッチなんです」
「スイッチ?」
「そうですよ、お客さんが言ったんですよ?はっきりしろって。だからこっちで用意したんです」
「ちょっと待って、アタシはお魚買いに来たんですよ?なんで、こんなメカメカしいスイッチを受け取ってるわけ?」
「だって、この間、うちの店先で揉めたじゃないですか?『なんで魚屋なのにメジロなんか売ってんだ!?メジロは鳥でしょ』って?」
「そりゃそうでしょ?どこからどう見ても、青魚なのに『メジロ』って名前で売ってたらよくないんじゃない?ほら、法律に触れるわよ、景品表示法とかなんとか、その辺に」
「違うんですよ、『メジロ』って言っても、あの鳥の方じゃなくって、ブリの小さいやつを『メジロ』っていうんです」
「そうだったわそうだったわ、それは教えてもらったわ。あれでしょ?出世魚とかいうんでしょ、大きさによって、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ、って名前が変わるっていうんでしょ、それはわかったわよ。でも、『メジロ』と『ブリ』って意味が違ってくるんじゃない?大体、大きさが違うだけで、生き物としては『ブリ』じゃない?なんでわざわざ呼び方を変える必要あるの?」
「でもほら、ニワトリだって、たまごから生まれたばかりの時はヒヨコじゃないですか?イノシシだって、子どもの時はウリボウっていうでしょ?」
「それは見た目が変わるからじゃない?ヒヨコの時は黄色いけど、ニワトリになったら白くなったり茶色くなったりするじゃない?ウリボウだって、イノシシになったら斑点が消えるじゃない?犬とか猫とか、せいぜい子犬とか子猫の子がとれるくらいで、やっぱり犬は犬だし、猫は猫だわよ。
だからね、アタシが言いたいのは、見た目も大して変わらないのに、微妙な大きさの違いだけで、名前まで変えちゃうのがどうかなって思ったわけ。どうせ、何センチ何ミリまでがメジロ!とか厳密に測ってるわけじゃないんでしょ?ボーダーライン上のサイズだったらどうするの?ってことなの」
「ええ、ですから、その辺のあいまいなところをはっきりさせるスイッチです」
「どういうことよ?」
「ちょっと、試しにそのスイッチをパチッと、切り替えてみてください」
「え?こう(パチリ)」
「見てください!この魚につけてる『メジロ』って札が『ブリ』に変わりましたよ!反対に切り替えてください!『ブリ』が『メジロ』に変わりましたね!つまり、どっちでもいいような時は、お客さん自身で名前を決めてもらうことにしたんです!」
「はぁ?ということは、このためにわざわざ、魚につけてる値札の名前をタブレットで電子化したの?ねぇ、もっとほかにお金の使い道あったんじゃないの??ああ、わかったわわかったわ、じゃあ、えーっと、(パチリ)『メジロ』もらっていくわ。面白いわね。ほかにもないの?」
「名前が変わるやつですか?これとかどうですか?」
「この白身?フッコ?…フッコ?(パチリ)『スズキ』に変わったわ。なるほどね、じゃあ、これは『スズキ』でいただくわ。」
「毎度!ありがとうございます!」
「ほかに要るものあったかしら、あら?お肉も扱ってるのね?」
「そうなんですよ、知り合いの猟師からジビエ肉も仕入れたんで」
「これは…若いイノシシの肉?ほんとにイノシシ?じゃあ、このスイッチ使ってみようかしら?あら?変わらないわ?パチリパチリ?」
「あー、それは、スイッチじゃ変わらないですよ?」
「どうして?ねぇ、この場合『ウリボウ』と『イノシシ』と切り替わるんじゃないの?このスイッチもう壊れちゃったんじゃないの?」
「そんなことないんです。イノシシだけはスイッチじゃないんです」
「どうして?」
「イノシシの肉はボタンになります」
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例によって例のごとく落語的なものになりました。
今回は「うりぼう」→「イノシシ」と成長すると名前が変わることから、出世魚を主軸にもってこようと画策しました。
「出世するスイッチ」みたいなものを登場させて、主人公の旦那さんをどんどん出世させちゃう、みたいな話にしようかと思ったのですが、それだと、なんでもありのファンタジーになっちゃうなぁと書いてる途中で路線変更して、今回のような流れになりました。
「スイッチ」というものが聞き手にイメージさせにくいのではないか、そもそも「スイッチ」が「ボタン」的な物とイメージされてしまったらオチが成り立たなくなってしまう、というところがネックかもしれません。
とはいえ、1時間でどうにかこうにかオチまで書けたので、よかったなぁと思ってます。
オチもそんなに悪くないと思ってますw
とてもいいトレーニングになりました。
また折をみて参加したいです。
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